■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
文化ホールがまちを輝かせる
(カテゴリー: 自治体の文化戦略
文化ホールがまちを輝かせる       
文化施設をつくる目的は何か 
 文化的なまちとは、住んでいたいと思い住んでいることが誇りに思えるまちである。文化施設がまちを文化的に変容する。文化施設は運営次第、運営は人次第である。
 全国各地で、美術館、博物館、資料館、図書館、文化会館などの文化施設が次々と建設された。焼け野原からの戦災復興、虱と栄養失調、食べるものもなかったのである。
生産経済・経済生産と息せきって働き、公害列島の高度経済成長で経済大国、そして「経済動物・働き中毒」と評されるに至ったのだから、人間らしい感性を豊かに開花させる文化施設を建設するのは必要で良いことである。
 文化施設をつくることは良いことであるのだが、問題が噴出した。
 生産と経済で働きずくめであったから遊ぶこと楽しむことの意味が分からない。楽しむ意味が分からないから文化施設の大切さが分からない。分からないで文化施設をつくるから問題が噴出する。
 例えば、“現職館長が公立美術館批判”との見出しの付いた新聞記事には、長い間、国立と公立の美術館の運営に携わってきたお二人の現職公立美術館長が、「美術館の劣悪な環境」を憂えて、単年度予算では数年先の企画展は出来ない、地元作家に限定せよと地元美術家を代弁する議員の圧力などの実態を述べ、美術館の財団法人化、人事の公募制、国・公立間の人事交流を提言していた。
美術館は「人間の心自然」を守るものであるのだから、道路建設や福祉事業とは異質である。だが、今の行政にはそこのところが分からない。分からないで文化施設を役所流でつくり役所流で管理するから問題が噴き出すと語っていた。問題は美術館だけではない。博物館も資料館も図書館も、そして文化会館にも問題が噴出している。
 
文化会館への批判 
 文化会館が全国各地に建設された。そして、次のような批判がなされた。
・行政は建物を建てることが目的で運営のことを考えない。
・明確な設置目的がなくて無難に安易につくるから多目的会館になって何に使っても中途半端な無目的会館になる。
・芸術芸能の空間は「大は小を兼ねない」ことが分からない。だから客席数の多い大ホールをつくる。
・舞台の役者の顔が見えない大ホールをつくるのは、成人式や表彰式などの行政行事に使うためで「文化」は付け足しである。
・実際に利用する人の声を聞かない。演劇・演奏についてはまったく何も知らない建築家に設計させてつくる。だから使い勝手の悪い欠陥ホールになる。
・生涯を規則と前例で何事も万事無難に大過なくやってきた行政職員が行政財産とし管理するから閑古鳥が鳴く建物になる。
・館長は行政内の序列で最後の花道として任用され、職員はローテーション人事で異動するから、規則で管理する建物になって地域に文化の種を蒔き育てる文化会館にならない。
 なぜ、このようなことになるのか。
 文化会館は何のためにつくるのかを真剣に考えないからである。
 行政の担当者は「そんなことはない、考えている」と反論するであろう。「文化会館を建てるのは地域の文化振興のためである」のだと。
 しかし、文化会館を建てるだけでは文化の振興にはならない。しかも、行政財産として管理したのでは文化会館は地域で呼吸せず地域に文化は育たない。 文化施設は運営が問題である。「文化施設は運営次第であり運営は人次第である」のだ。

行政文化の実情
 役所の担当者や首長は言うであろう。「運営も考えているのだ」と。
しかしながら、考えているとはとても思えないのが現状である。建物を建てた後で「館長は誰がよいか」を考えている。それが実情である。
文化施設は、基本設計の前に「誰がこの施設で、何をどうするのか」を見定めて、そのような構造の建物をつくるのが重要である。
だが実態は、「文化施設については何も分かっていない実直な公務員」が「さしたる見識もない首長の意向を伺い」つつ「発注を受けたいだけの建築屋」と「市民不在の場で密かに協議」して「莫大な費用で建物をつくっている」のが文化会館建設の実態である。
 だから、文化施設への批判が噴き出すのである。
 行政の担当者は「文化振興のために文化会館を建設する」と言う。しからば、その文化振興とは「何をどうすることであるのか」「文化会館がどのような働きをしていかなる文化がどのように変わるのか」との問いに、明確な答えは返ってこない。文化振興という言葉があって中身がない。「文化振興」とは中身のない言葉である。行政には内容空疎な言葉が多い。今の行政のままでは文化施設をつくっても地域に文化を根付かせ花咲かせることは出来ない。行政文化の自己革新が不可欠である。

文化振興とは何か
 「地域の文化を振興する」というのは「文化的なまちをつくる」こと。まちが文化的に変容することをめざすのが文化振興である。
しからば「まちが文化的に変容する」とはどのようなことか。
 二つである。
 一つは、そこに住んでいる人びとが変容する。
 住んでいる人びとの感性が豊かになりモノとカネだけでないライフスタイルに次第に変容する。たとえば、子どもを学習塾に通わせるだけが幸福な人生を約束するとは考えない大人がまちに増えることである。人びとの価値観とライフスタイルがそのまちの文化である。文化ホールをつくることによってまちの人びとの価値観とライフスタイルが次第に変容する。文化ホールのつくり方は文化のまちづくりそのものである。
 二つは、まちの風景、雰囲気、たたずまいである。
 まちが文化的に変容するとは、美しく潤いがあり、華やかで活気があり、落ち着いた風格のあるまちになっていく。まちがそのようになるのは、住んでいる人びとがまちへの愛情を心の内に育み育てるからである。
住んでいる人びとにその心がなければ、美しく潤いのあるまちにはならない。住んでいる人びとにまちへの誇りの感情がなければまちの風格は出てこない。文化ホールのつくり方によって人びとがまちへの愛着・一体感・愛情を育てる。文化ホールのつくり方と運営に関わることによってまちへの誇りの感情を心の内に育てる。
 つまりこれが、文化の振興のために文化施設をつくるということの意味であろう。しかしながら、行政の文化施設のつくり方は逆である。伝統的な役所流で計画し発注し行政財産として管理する。
 まちを文化的にする絶好の機会を、行政は投げ捨てているのである。

行政の論理
文化会館は公の施設である。公の施設は行政財産である。行政財産は行政の責任で建設し管理する。住民は行政が提供するサービスの受益者である。住民は公共政策の主体ではない。「行政が政策執行の主体で、住民はまちづくりの主体ではない」である。
これら「無難に大過なく」の「行政文化」では「住んでいることが誇りに思えるまち」にならない。まちづくり派の公務員も一皮むけば伝統的な公の施設論者である。統治支配の官庁理論が役所内には根強く浸透しているのである。
だが、公の施設論では文化ホールをつくっても役所が管理する建物になる。地域に文化の種を蒔き育て花を咲かせる文化ホールにはならない。市民文化の拠点にはならない。

首長の役割
 文化施設は運営次第、運営は人次第である。
運営する人を探し出すのも文化施設のソフトである。全国各地の文化施設で評判の良いところには人がいる。その人を見出しそこに配置したのは首長である。莫大巨額な文化宮殿をつくるよりも運営する人を見出すことである。
 全国の文化施設のなかでトップレベルの運営であると評されている館長は首長が三顧の礼を尽くして迎えたところである。文化施設の運営は首長次第であると言える。
(1)多額の費用で施設をつくるのだから、首長自身がすぐれた文化施設を視察する。すぐれた運営をしている人、文化施設をつくった首長に逢って意見を聴く。地域にどのような影響が出たかを自身の目で眺める。
(2)文化施設の建設を、まちづくりの絶好のチャンスと考えて、政策討論のシカケを工夫する。担当者は行政内の年功で選ばない。市民の成熟が文化のまちづくりであると考える。
(3)文化施設は人次第であるのだから構想の段階から運営する人を選ぶ。
「館長」は行政財産を管理する人のイメージがあるから、呼称は「支配人」がよい。建設前に選任された支配人であるならば、地域の実態と文化施設の関わりを考えるため、すぐれた施設を視察して最適の構造を考えるであろう。
(4)支配人は公務員からでなく人材を外に見出す。「文化」と「行政」は原理が異質である。伝統的な行政内の考え方では文化施設の運営は出来ない。
文化施設の運営は行政財産の管理ではない。
(5)首長は支配人に「この施設で何をなさっても結構です」「いかように運営してもよろしいのです」「一切お任せします」と言えば、素晴らしい文化施設になるであろう。会計制度、財務規則、人事制度、そして「公の施設論」などの「伝統的官庁理論」がせっかくの文化施設を「行政が管理する建物」にする。
「文化施設を例外扱いにする知恵」が必要である。それが「行政の文化化」である。
文化会館は、翌日の明け方まで、感動と興奮でさんざめく交歓の場でなければならない。他の公共施設と横並びで、規則どおりに管理するのでは、地域に文化の芽は育たない。
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