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■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
書評・『新自治体学入門』 高橋悟(自治体政策研究所理事)
(カテゴリー: 研究ノート・書評
高橋悟さん(自治体政策研究所理事)が
『新自治体学入門』の書評を
「地方行政誌」に掲載して下さいました。
下記をご覧下されば幸いです。
https://drive.google.com/file/d/1yHOkceOP8FsphH0dKI5FspZtzAo8J4ix/view?usp=sharing

切れのある文章を書く人は多いが、本書の著者ほど曖昧さを排除し明晰な文章を書く人は少ない。刊行から10年が経つ本書ではあるが、ここに提示されている論点は今なお新しく鮮烈だ。
 機関委任事務制度の廃止などを主な内容とする2000年の分権改革に先立ち、わが国の自治の歴史上特筆すべき2つの出来事があった。
1つは1960年代における松下圭一理論の登場であり、もう1つは1980年代における自治体学会の設立である。
 本書の著者である森啓先生(現在北海学園大学法科大学院講師)は、この自治体学会の設立に深くかかわった一人である。中心的役割を演じたと言ってもよい。その経緯は、本書の第10章に詳しいが、学者・研究者だけではなく自治体職員や市民を交えた学会の設立は、自治の歴史上画期的な出来事であった。
 著者は、元神奈川県職員であり、自治総合研究センター研究部長などを歴任し、退職後、北海道大学に転じた。その後、北海学園大学で日本で初めて専門科目としての「自治体学」の講座を開講する。このように自治の現場を体験し、自治体学会の設立に深くかかわった著者の手になる本書は、自治体学の理論の集大成であるとともに入門書としても最適だ。
 本書で一貫して追求しているのは、わが国の政治・行政の考え方を「国家統治」から「市民自治」に組み替え、住み続けたいまち
を実現することである。     
 その具体的な実践が、かつて全国に大きなうねりとなって波及し自治体のあり方を変えていった文化行政と政策研究であった。
 本書第3章「市民力と職員力」では、文化行政を「住み続けていたいと思い住みつづけることを誇りに思える地域社会をつくる市民と行政職員の協働の営為」と定義している。留意すべきは、ここで言う「協働」の意味が「自己革新」した「市民と行政職員の協力」を指す点にある。学者が訳知り顔に言う「コラボレーションの訳語」ではないのだ。 
 「自己革新」つまり「主体の変革」とは、自らの価値軸を「国家統治」から「市民自治」へと転換することだ。しかし、その前には様々な壁が立ちふさがる。いかに突破していくか。著者は本書のいたるところで読者に対し「一歩前に出る」勇気を鼓舞しているように思われる。
 一方で著者は「状況追随思考」が蔓延する現状に対して警鐘を鳴らす。「自治基本条例」や「町村合併」などの自治体の最重要事項は議会の議決だけで決定するのではなく、住民投票を行うべきとする主張は大いにうなずける。
 自治体理論は、松下圭一教授の民主主義理論を基本前提として、価値軸の転換を促すための実践を自治体レベルで追求した理論とみることができよう。つまり自治体学は、松下教授と自治体職員との「共同創造理論」であるとともに松下理論の「発展型」なのだ。
 誤解を恐れずに言えば、自治体学は「科学」ではない。それは、自治の現場での“実体験”と多くの“まちづくり事例”に裏付けられた「未来の可能性」への「確信」である。 自治の現場で模索を続ける市民、自治体職員にぜひとも読んでいただきたい一書だ。
   (高橋 悟=自治体政策研究所理事) 

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