■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
市民政府の理論
(カテゴリー: 自治体学講座
連続講座「市民自治とは何か」   さっぽろ自由学校「遊」
- 民主主義の理論=松下圭一を読む-

第四回 市民政府の理論            2015-7-29 (水) 
テキスト 岩波新書「市民自治の憲法理論」「日本の自治・分権」  
                        
1. 自治体とは
1) 自治体の概念
 「自治体」の概念をめぐって見解が錯綜する。 
・「自治体」とは「政府」のことであるから「市民」は含まない。
・「自治体」とは「市民」と「政府」の双方を包含する言葉である。
・役場の文書や会議で使う「自治体」は「都道府県庁、市役所、町村役場」のことだ。
・役所だけが「自治体」を僣称することに違和感を覚える。
・自治体とは「まち」のことで、自治体は空間的イメージである。

概念・用語は思考の道具である。
理論的思考力を高めるには基礎概念を曖昧に使用してはならない。

2) 自治体とは、行政機構・役所のことではない。
自治体の主体(主人公)は市民である。
長い間、国民は「国家の一要素」とされ、国家の被治者とされてきた。そのため、憲法が国民主権に転換しても「主権者意識」が希薄で、自治体とは行政(役所)のことだと思ってしまう。

3) 自治体は「地方公共団体」ではない。
「地方公共団体」の言葉は、1946年の憲法制定のとき、旧内務官僚が造った用語である。GHQとの英文=和文のやり取りで、知事公選に抵抗し反感を抱いた旧内務官僚が、全国を画一支配するために造った言葉である。英文はLocal Self-Governmentである。これを地方公共団体と翻訳したのである。(当時のペテン的翻訳は、有斐閣・ジュリスト416号「地方自治20周年号」高木鉦作)

4) 自治体は「市民」と「政府」の二つを包含するコトバ(概念)である。
ところが、「自治体とは役所のこと」だと考える人が多い。松下理論に賛同する人も「自治体とは政府のこと」だと述べる。自治主体である「市民」は出てこない。
「自治体とは」の設問に、いの一番に「市民」が想起されないのはなぜであろうか。
「市民」も「市民自治」も「自治体」も規範概念である。「規範的思考」に習熟していないから「市民」を想起しないのであろう。
例えば、月刊「職員研修」2015-8月号-特集「松下圭一、<自治>へのまなざし」の五人の論稿は「用語も叙述も」松下著作のままである。執筆者が松下著作の「規範概念」をどのように「理解したのか」、松下著作の「規範論理」に「賛成なのか」「不賛成なのか」は語らない。語れないのである。自身の言葉で語れないのは、「松下理論を咀嚼していない・理解していない」ということである。

2 松下理論の骨格
 松下理論の骨格は三つである。
 第一は「市民自治」
 第二は「自治体政府」
 第三は「市民政治」

1) 市民自治
「国家」が統治主体であると擬制する「国家統治」に対して、「市民」が民主政治の主体であるとして「市民自治」を提示した。
市民自治とは「市民(人々=People=Citizen)が公共社会を管理運営するため、政府(首長と議員)を選出し代表権限を信託する」である。
信託は白紙委任ではない。選挙は信頼委託契約である。代表権限の逸脱には信託解除権の発動となる。これが「市民自治」であり「市民政治の理論」である。

2) 自治体政府
科学技術が発達し前例のない解決困難な公共課題が噴出する現代社会では、政府は三層に重層分化する。(多元重層の分節政治理論)
① 地域レベルの公共課題を解決する自治体政府
② 全国レベルの公共課題を解決する中央政府
③ 国際社会の公共課題を解決する国際政府(世界政治機構) 

3) 市民政治 
工業文明が進展して普通の人々が<余暇と教養> を享受し、シビルミニマムの公共整備の要請とあいまって、生活問題の解決が必要なとき、構造必然として市民活動が始動する。現代社会では大衆政治と市民政治の「絶えざる緊張」が繰り返される。

3 松下理論は難解か
松下理論を難解だと言う人が少なくない。文体が馴染めないと言う人もいる。
 問題は「なぜ難解だと思い馴染めないと感じるのか」である。
 松下理論を理解するには、自分自身の「政治イメージ」と「基礎概念」の再吟味が不可欠である。自身の政治イメージを問わず基礎概念の吟味を拒む人は、松下理論を正当に理解することはできないであろう。
誰しも、自身の思考の枠組や基礎概念を問い直すのは緊張感が伴い苦痛である。だから、無意識的に自分を庇い「難解だ」の防御壁をめぐらすのではあるまいか。
 松下理論は通説である国家学理論を転倒するのであるから易しくはない。
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