■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
自治体法務検定と自治体学会
(カテゴリー: 自治体法務検定
自治体法務検定と自治体学会  

1 胡散臭い「自治体法務検定」
 2010年4月23日、自治体学会のML(メーリング)に「自治体法務検定」の事業を行う企業の職員から案内が(受検定の勧誘が)流された。これに対し『このような馬鹿な検定はメールで流さないように心がけてください。法務の能力は検定で計るものではありません』との所見が発信された。筆者はこの所見に「同感です」と発信した。「法務検定」なるものが「胡散臭い」と思ったからでもあった。
 自治体学会MLに所見メールが交錯した。「馬鹿な…の言い方を」批判するメールが(検定を擁護する立場から)続いた。筆者は「同感です」と賛成した立場なので、「考え方」を記しおく。

2 よくある会話
 よくあることだが、会話で「…そんな馬鹿なことを」「馬鹿とは何だ、訂正しろ…」
と迫る場面がある。映画「12人の怒れる男」では、少年が「殺してやると言った」のだから犯人だ、の場面もあった。「本筋の論点」をズラして「言葉づかい」を咎めるのは「適切ではない」「フエアでない」と思う。
Yさんは、Tさんに『No.846発言の(馬鹿な)の表現は不適切であったと私は考えますが、いかがでしょうか。』と書かれた。(巧妙に咎めた)。
(多くの人が眺めるMLで)「馬鹿な…」の表現を切り取って、表現が不適切だと指摘されれば、MLという全国に一斉発信されるシクミでは立場が悪くなるものだ。「馬鹿な…」の言葉は(それだけ切り取れば)良い言葉ではないのだから。
Yさんは「咎めていない」と言うだろう、「不適切な表現だ」と言っただけのことですと言うかもしれない。だがYさんのメールはフエアではないと思う。
 対論するべきは以下の論点である。
Tさんのメールの主旨は『…全て法務は実際の現場の上に出てくるものであり、勉強をするのは当たり前ですが、そこからは現場で使えない頭ばかり大きな職員が生まれるのではないかと懸念をしているだけです』である。 論点はこれである。
このTさんの (検定への疑念の) 論点に対して、Yさんはご自分の所見を述べるべきだと思う。
(それをぜひ聴きたいものである) 。

3 自治体法務検定委員会なるものは
委員長  成田頼明( 横浜国立大学名誉教授)
副委員長 松本英昭( 元自治事務次官)
副委員長 鈴木正明( 市町村アカデミー学長)
顧  問 石原信雄( 元内閣官房副長官) である。
この四人の方々は「集権統治の国家学の考え方を進めてきた著名な方々」である。
Yさんは、そこに検定委員として名を連ねていられる。
受検料(税込)は 5,250円である。 
全国で受験者がふえていけば利益は次第に大きくなるであろう。

 自治体学会は(会則にも掲げるように)「中央支配の行政法学理論」を「市民自治の自治体理論」に組み替える研鑽の場である。自治体学の理論認識と体験交流を深める場である。自治体学会はこれらの方々の対極にある考え方である。 
 自治体の政策法務能力は、「有料の検定」ではなく、Tさんの書かれているように、現場の実践理論であるのだから、自治体学会の場でこそ相互研鑽するべきである。
名を連ねている検定講師に、自治の現場の実践論理が分かるであろうか。
 後で述べるように、甚だ疑問である。

「漢字検定」「英会話検定」などは受験者が多く莫大利益を上げているとのこと。
最近は「自治体議員検定」もある?らしい。そして今回は「自治体法務検定」である。
これらの動向に疑念を感じるのは自治体職員の健康な思考力である。
(北海道自治体学会ニュースレター(2010-4月号)に「自治体職員の思考力」を書いた)。 
そもそも、「政策法務の問題意識」と「現場事態の打開論理」は検定で習得できることではない。
 政策法務能力は検定によって高まるものではない。
「時代の言葉」に便乗して利益を当込む企業の企画に、参画する学者の心底は如何なるものであろうか。
 
4  自治の現場を知らない学者
 かつて、政策評価制度の導入が流行し自治の現場を知らない学者が講師に招かれた。
かくして現在、政策評価制度は如何なる状況にあるのか。市民の共感を得て機能している政策評価制度はどれくらい存在するのか。(新自治体学入門にそのことを書いた)
 2005年前後に合併騒動が降って湧いた。日頃、分権自治を述べていた学者は「推進する側の委員」に就いた。全有権者投票を求める署名運動が各地におきた。だが徳島吉野川河口堰の「50%条項」を悪用し投票箱内の「市民自治の意思」を焼却した。そのとき「自治体政策法務学者」から、適切な(一歩前に出た)発言は殆ど無かった。検定委員として列挙されている学者からは皆無であった。「開票せず焼却する」は政策法務理論の緊急課題であったのだ。
(さてここでも「悪用とは何だ」と言うことに論点が移動するのであろうか)

5 Tさんの所見に賛成である。
 自治体法務検定のホームページに並んでいる講師の方々よりも、Tさんの自治体政策法務の考え方がはるかに実際的で有用であると思う。
「有料の法務検定」よりも「T学校にこそ集結」すべきである。
「自治体法務検定」は国家学の行政法学理論の知識研修である。
 自治体法務検定に対する疑念は、近く刊行物に書く心算である。

 北海道自治土曜講座(第16回)は
2010-7月17日 宮本憲一教授「日本社会の可能性 ~自治体の政策力~」、
2010-8月28日 松下圭一教授 「市民の時代 ~国家統治理論から市民自治理論へ~」 を開講する。私は司会の立場であるので、両日の午後の討論で「政策法務の検定制度」をも論じたいと考える。検定委員の方々にはぜひお出かけ頂きご指導を賜りたい。

 以上の所見に対して、検定委員であるYさんから自治体学会のMLで、筆者宛てに数点の応答がなされた。
 その一つは、「Tさんの (検定への疑念の) 論点に対して、Yさんはご自分の所見を述べるべきだと思う。それをぜひ聴きたいものである」 との筆者の所見 に対して、
 ●この点は、簡単に述べることはむずかしいと考えます。検定で政策法務能力がどこまで高まるかものかわかりませんが、少なくとも、何もしないよりはよいと思います。
 何が「政策法務」で、従前の「法務」と何が異なるのか、私にはわかりません。 というものであった。

 他の検定委員の方々は、Tさんの「法務検定への疑念」に、どのように応答するのであろうか。
 おそらく応答できないのではあるまいか。
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