■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
書評 「文化の見えるまち」 
(カテゴリー: 新刊案内
 宮本憲一先生が、小著「文化の見えるまち」の書評を書いてくださったので転載する。

 森啓著「文化の見えるまち」(公人の友社・2009年8月刊行)

 本書は、自治体の文化政策の教科書といってよい。
 ここでは73年に大阪府から始まった文化行政の30年を検証している。冒頭において文化の見えるまちとは「住んでいることが誇りに思えるまち」として、自治体の存立意味は「文化の見えるまちをつくる」ことにあると定義している。
 この場合の自治体とは、行政のことではない。自治体の主体は市民である。従って、「文化の見えるまちづくり」は「市民自治のまちづくり」でなければならぬ。これが自治体学理論である。
 彼は、文化行政ではお役所の縦割り行政の弊害が出るとして、「文化のまちづくり」という総合概念にしている。そして「文化の見えるまち」をつくるには、「主体の自己革新」が必要だとしている。
 それは、自治体職員も「省庁政策の支配」から脱皮し、「自治体独自の政策発想」を獲得する可能性を求めることである。このための開発の場として、市民と文化団体と行政職員が同じ地面に立って話し合う「文化の見えるまちづくりフォーラム」が開催されたのである。
 91年に徳島市で「参加から協働へ」をテーマに第1回が開催され、第11 回が「まちに文化の風を」というテーマで池田市の市制70周年記念行事として共催されたのである。

 本書には、自治体の文化戦略という副題がついている。 そして、彼の定義によれば「説明理論」としての「行政の文化化」や「協働」について論じた後、「実践理論」である文化ホールのあり方や地域文化の主体について述べている。彼によれば、すべての行政を文化行政の施策といえるものに組み替えるのが行政の文化化である。文化化された行政政策によって「住んで誇りに思える文化の見えるまち」をつくるのである。
 例えば美術館のような施設をつくるだけでなく、伝統行事を復活させ自然や歴史的景観を市民と共同してつくり出すこと、商店街の再生や地域産業を地域生活に定着させる市民と行政の協働など、すべてが文化行政の施策である。この定義は少し晦渋であるが、文化政策がまちづくりの中心として総合行政でなければならないといっているのである。
 
 この本では、文化ホールと自治体の文化戦略についての松下圭一氏と著者の対談が面白い。バブルから景気政策の過程で、公共事業の一環として文化ホールが各地に建てられ、70年代の450から08年には2192に増えている。公会堂のような多目的ホールから専門ホールまであり、その管理・運営について、採算が取れず、また有効な活用ができていないなどの批判がある。文化ホールをまちづくりの拠点とする森氏は「まだ足らない」とし、松下氏は批判が出ていることに未来を感じている。最近の指定管理者制度も含めて、管理主体の問題やまちづくりへの生かし方は文化行政の重要な論点であろう。
 また文化行政への視角では鶴見和子氏、清成忠男氏と著者の鼎談も興味深い。
         宮本憲一(大阪市立大学名誉教授)
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