■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
自治体学の概念 (開発論集93号)
(カテゴリー: 自治体学の基礎概念
  自治体学の概念 (開発論集93号)

自治体学とは、国家学の「国家統治の観念」に「市民自治の理念」を対置して国家学を克服する学である。

1) 国家学と自治体学
国家学は「国家」を統治主体と擬制する。しかし、その「国家」の観念は曖昧である。国家を「国民・領土・統治権」と説明するが、その「国家三要素説」なるものは、性質の異なる(団体概念)と(機構概念)をないまぜにした曖昧な説明である。

「国家」は、政府、官僚、議員など、権力の場に在る人達の「権力行使の隠れ蓑」の言葉である。そして、少し注意してそれら権力者の言動を観察すれば「国民主権」を「国家主権」と巧みに(狡猾に)言い換える場面を目撃するであろう。
権力の場に在る人たちには「国家が統治主体であり国民は被治者である」の観念が抜き難く存在するのである。(統治支配がやり易いからである)

 明治の時、「State」を「国家」と翻訳した。しかしながら、「ステート」は「全国規模の政治・行政機構」の意味であって、今風に言えば「中央政府=セントラルガバメント」である。「幽玄の国家」ではないのである。

 「言葉」は「思考の道具」である。思考を明瞭にするには「概念」を明晰にしなくてはならない。福田歓一氏(元日本政治学会理事長)は、一九八五年パリにおいて開催された政治学世界会議での報告で「われわれ政治学者は国家という言葉を使うことを慎むべきである」「規模と射程に応じて、地方政府、地域政府、全国政府と使いわけるのがよい」「人類の政治秩序の諸概念を再構築することが切実に必要であると信じる者として、過度に一九世紀の用語に囚われていることを告白しないではいられない」と述べた。

 だが、現在日本の憲法学、政治学、行政法学、行政学の大勢は、国家統治の国家学である。
例えば、憲法学で国家試験の最適教科書と評される芦部信喜「憲法」(岩波書店)の第一頁第一行は「国家統治」であり「国家三要素説」であり「国家法人理論」である。
そして、国会議員と官僚は「国家観念」を言説し、「政治主体である市民」を「国家統治の客体」に置き換え、「国家」を隠れ蓑にして「統治論理」を振り回すのである。

 「国家の観念」に「国民」を包含させるから(国家三要素説)、「国家責任」は「国民自身の責任」のような曖昧論理になって、国民の「政府責任」「官僚責任」追及の矛先をはぐらかすのである。権力の座に「曖昧論理の手助け」をしているのが国家学の学者である。国家法人理論は「国民主権」と「国家主権」を曖昧に混同し「政府」と「国家」の区別を混同させる理論である。

国家学は「国家統治」の「国家法人理論」である。
自治体学は「市民自治」の「政府信託理論」である。

2) 信託理論
自民党がインターネットに掲載している「チョット待て! 自治基本条例」を一読すれば権力の座に在る者には「国家統治の観念」が現在も強固に存続していることが判る。しかしながら、国民は国家に統治される被治者ではない。民主主義は「国家の統治」で
なくて「市民の自治」である。

政府と議会の権限は選挙によって国民が信託した権限である。選挙は「白紙委任」ではないのである。「代表権限の信頼委託契約」である。身勝手な代表権限の行使と運営は「信託契約の違反」であるのだ。選挙の翌日も主権者は国民であって国家ではないのである。信託契約の著しい逸脱には「信託解除権の発動」となる。

自治体学は「国家」を「市民と政府」に分解して、「市民と政府の理論」を構成する。すなわち、「市民」が「政府」を選出し制御し交代させるのである。民主主義の政治理論は「市民と政府の理論」「政府制御の理論」「政府交代の理論」でなくてはならない。
自治体学が民主主義の理論である。

3) 実践理論
 理論には「説明理論」と「実践理論」の二つがある。
「説明理論」とは、事象を事後的に客観的・実証的・分析的に考察して説明する理論である。「実践理論」は未来に向かって課題を設定し解決方策を考え出す理論である。
実践理論は「何が課題であり、何が解決策であるか」を言葉で述べるのである。言葉で述べるとは「経験的直観を言語化する」ことである。

「経験的直観の言語化」は、困難を覚悟して一歩前に出た実践によって可能となる。大勢順応の自己保身者には経験的直観を言語化することはできない。人は体験しないことは分らないのである。

「一歩踏み出した実践」による「自身の変革」なくして「課題と方策の言語叙述」はできない。すなわち、歴史の一回性である実践の言語叙述によって普遍認識に至るのである。「実践」と「認識」は相関するのである。

4) 市民自治
市民自治とは、「市民が公共社会の主体であり、公共社会を管理するために政府をつくる」という意味である。

「市民自治」は規範概念であるから「市民自治」の意味を理解するには「国家統治」に対する自身の所見が明瞭でなければならない。例えば、「自治とは自己統治のことである」と説明されているが、この説明は「自治」が規範概念であることを理解していないのである。
「統治」とは「統治者と被治者」を前提にした観念である。「自治」を説明するときに「統治」の言葉を用いるのは、「統治」に対置した「自治」の意味が理解できていないからである。

市民自治を要綱的に説明すれば
① 市民は公共社会を管理するために政府(首長と議会)を選出して代表権限を信託する。選挙は信頼委託契約であって白紙委任ではない。政府の権限は信託された範囲内での権限である。
② 市民は政府の権限を市民活動によって日常的に制御する。
全有権者投票は政府の代表権限を正常な軌道に戻らせる市民の制御活動である。 (「住民投票」の言葉には「国家学の貶め」が付き纏っているので「全有権者投票」の用語が良い)
③ 市民は代表権限の行使運営が信頼委託の範囲を著しく逸脱したときには「信託解除
権」を発動する。信託解除とは解職または選挙である。 

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