■■■  自治体学  ■■■

 既成の学問は「国家」を理論前提とする「国家学」です。
 自治体学は「国家統治を市民自治へ」「中央集権を地方分権へ」「行政支配を市民参加へ」組替える実践理論です。「実践を理論化し理論が実践を普遍化する」市民自治の理論です。
新刊紹介 「新自治体学入門」
(カテゴリー: 新刊案内
新刊紹介

 松下圭一教授が、小著「新自治体学入門」(時事通信社刊)の紹介文を月刊・地方自治職員研修(2008-5月号)に書いて下さったので転載する。

   職員が拓く自治体政府の展望   
                      
 芸術家やスポーツマン、政治家やジャーナリストなどは個性ある仕事が課題といえるだろう、サラリーマンや官僚のなかにも、個性ある仕事をする人物がいる。だが、2000年分権改革まで、官治・集権型の「機関委任事務」方式のため、個性ある仕事をしてはいけなかったのが、自治体職員であった。自治体職員に個性ある仕事をさせない官治・集権は、日本という「国の大失敗」だったと、自治・分権の今日、強調せざるをえない。
 
 本書の著者、森啓さんは神奈川県職員のころから、自治体職員のこの禁制を破って、個性ある業績をのこした数少ない自治体職員の一人である。このことは、森さんを知る人なら、誰もが認めるであろう。自伝風でもあるが、本書は現時点での白治体課題を、誰にもわかりやすいリズミカルな文体でまとめている。
 
 私が森さんに出会ったのは、1978年、神奈川県が公務研修所を自治総合研究センターにきりかえた前後だった。この再編の原案は私がつくったのだが、政策研究と政策研修とをむすびつけた日本で最初の白治体研修改革となる。森さんは、このセンターの研究部長にもなっている。その経験もふまえ、第9章「自治体職員の研修」では、自治省公認の旧人事院研修方式を背景にもつ、自治体独自の政策づくりという問題意識が皆無だった、かつての自治体研修を批判している。
 研修は、官治・集権の「歴史と価値意識」がしみこんだ言葉をつかう能吏ではなく、「地域課題」を自治・分権型で解決する自治体職員の、日々の誕生をめざすべきだという。自治体職場では、時代錯誤の、①慣例、②上司、③考え方がはびこり、その改革にとりくめば、今日でも「俄然辛い職場になる」。この実情のなかでは「研修の改革」が不可欠と具体案をのべ、特に現場での出会いにおける職員一人ひとりの「感動」という「衝撃」が必要だと、達意の論点をのべる。
 
 森さんはまた、(1)文化行政の提起、(2)自治体学会の創設にかかわっている。
(1)文化行政では、森さんはそのパイオニア職員として著作をかさねた。とくに『文化ホールがまちをつくる』は、ハコモノをタテ割行政ではなく、市民ついでその自治体の地域づくりとみなす最初の労作となる。第3章「市民力と職員力」がこの論点をとりあげている。
(2)自治体学会の創設については、第10章「自治体学会設立の経緯」が、関連文献の整理をふくめ、くわしい。
 1993年、森さんは北海道大学法学部に移るが、北海道の白治体を一躍有名にした、いわゆる「土曜講座」を自治体の方々とともに、1995年たちあげた。毎年数回の連続講座をひらき、その講義をまとめた公人の友社刊のブックレットは115冊になり、日本全体の自治体にひろく波及力をもつ。受講生のなかから、すでに北海道では10人をこえる長もでていると、本書はいう。
 
 そのほか、白治体改革、市町村合併、道州制、あるいは市民自治基本条例、住民投票などの章をもち、これらの最先端領域を森さんらしい切り口でのべる。「地方公務員から自治体職員へ」「自治体政府と自治体学」「国家法人理論 対 政府信託理論」など、理論レベルにも目配りをする。
「あとがき」に、理論には説明理論と実践理論とがあるとのべているが「一歩前にでる」実践理論の提起が本書の意義である。
 自治体職員の可能性を、私達は本書に具体性をもって発見できる。元気のでる本である。
                         

スポンサーサイト